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副業Sideline Business

概要


従業員の副業を認めていない会社は多いと思います。就業規則や服務規程等で明記されている会社が多いのではないでしょうか。今回はこの従業員の副業に対してどの様に考えていくのが良いのかを色々な例を交えながら述べたいと思います。

そもそも副業は禁止なのか

法律上は、民間企業に務めるサラリーマンの副業を禁止する規定はありません。むしろ社会保険などは複数の会社に務めている場合の扱いも規定されているほどです。しかし、ほとんどの会社で副業が禁止されていると思います。理由は色々あると思いますが、自社の業務に集中させるため、というのが大きな理由でしょう。

しかし、就業規則で副業が禁止されているからといって、副業をすると解雇や懲戒処分を受けさせることができるかといえば、これはケースバイケースになります。

例えば、「兼業農家」の場合はどうでしょうか。親から相続した田があり、仕事をしながら、農繁期には米を作るというのは、少し郊外に出ると多くあります。この場合、副業が禁止されているからという理由で、「兼業農家」の従業員を解雇したり懲戒処分にできるでしょうか。これは一般的にいって解雇や懲戒処分にするのは大変難しいでしょう。兼業農家という仕組みがある以上、「うちで働きたければ、田を売るか、米を作ってはいけない。もし米を作れば解雇だ。」などと言えるはずもありません。兼業農家も米を売って収入を得ているので立派な副業と言えますが、処分できないでしょう。

では、両親から相続した生家の近くに小さな土地があって、その土地を近所の人に駐車場として貸していた場合はどうでしょうか。二人の方に月15,000円で貸していて、合計30,000円、年間360,000円の収入を得ていた場合、これも立派な副業となります。では、会社は駐車場を貸すのを止めさせることができるでしょうか。「近所の方に車を除けてもらうか、土地を売却しない、又は空き地のままにしなさい、でなければ解雇です。」といって解雇できるでしょうか。これも大変難しいと思います。

このような例は枚挙に暇がありません。ブログなどのアフィリエイト収入もそうです。個人名を明かさないで仕事と全く関係のない趣味のブログで、広告収入が月1万円程度あれば、年間12万円の副業となります。これも、処分するのは大変難しいと思います。

してはいけない副業とは

では、どのような副業は、やってはいけないのでしょうか。まずは、「本業と同業種で働く」というものです。

会社と同業種の別の会社に勤めたり、自分で個人事業や会社を設立して営むことです。これは、「競業避止義務」からも違法行為とみなされます。

競業避止義務というのは、会社の業務と同業種の仕事を他社や自営で行うことを禁止することです。会社で得た技術やノウハウを私的に利用して競業的な行為を行う為、会社の営業を妨げることになります。

従業員に対しては、不正競争防止法や労働契約法の観点から競業避止義務が課せられていると考えられています。ちなみに、会社を辞めた従業員に対しては競業避止義務が課せられません。この為、入社時や退職時に同業他社への転職や独立開業を一定の場所と期間で禁止する誓約書にサインをすることがあります。

このように、競業避止義務により、同業種の仕事を会社以外の場所で行うことは禁止されています。

次に禁止されるのが、本業の社会的な評判を著しく失墜させるような副業です。例えば、アルバイトで夜のお店で働くような場合です。昼間の本業の会社ににもよると思いますが、会社のイメージを著しく失墜させるとなると副業して認められるのは難しいでしょう。

副業のリスク

では、副業を行う上でのリスクを考えてみます。こちらは会社、従業員の双方にとってリスク要因となるものです。

夜間や休日に他社でパートやアルバイトで働く場合です。この場合は、本業への悪影響を考えて会社は禁止したり、許可制にしている事があります。

まずは、仕事が終わった後に、もう一度パートやアルバイトを行うため、体力的にも辛くなり、本業に集中できなくなり、パフォーマンスの低下が懸念されます。

また、他社でアルバイトなどをされると会社に取って何かと面倒な事がおきる事があります。実際いあった事例を紹介しますと、アルバイト先で労災にあって、仕事ができなくなりました。このように、仕事ができなくなり、会社から給料をもらえない場合、労災から所得補償として、休業補償給付が支給されます。労災の休業補償給付は、特別支給金と合わせて平均賃金の8割が支給されます。

しかし、アルバイト先での労災なので、支給額が本来の年収に比べると極端に低くなります。毎日数千円のアルバイト料だと、小遣い稼ぎには良いかも知れませんが、これで労災になれば、とても生活出来るだけの支給は受けられません。この為、本人にとっても生活ができなくなるほど一気に収入減にみまわれます。そもそも仕事中の怪我などで働けなくなった場合を想定して作られている労災が意味をなさなくなります。

また、労災になると治るまでは解雇できないのですが、本業の会社からすれば関係ないので、解雇されてしまう可能性もあります。結局アルバイト先の会社しか残らないということになりかねません。このようなことになると、本業の会社も突然従業員が働けなくなるので、リスクが大きくなり、全くメリットがありません。

次に従業員の副業で問題になるのが、本業の仕事中に、自分の経営している会社の仕事をすることです。例えば、自分の経営している会社の広告やチラシを会社のコピー機を使って大量に印刷するなどは、たまにある話です。


また、美容室などの場合は、店の名簿を持ちだして、自分の経営している店の顧客として勧誘したりする場合もあります。

このように、従業員が、会社以外で仕事を別途おこなうことは、会社にとってデメリットが大きくなり、リスク要因ともなります。



副業のタイプ分け

次に、実際にサラリーマンの方が行っている副業の種類を分類してみました。

No. タイプ  具体的な副業内容 
バイト型 深夜バイト、休日バイト、短期(日雇い)バイト  など
事業型  専門能力業(翻訳など)、趣味での収益、講演会、兼業農家、など
財テク型 株、先物取引、為替、金、オークション、転売ビジネス  など

今まで各社の従業員にヒアリングした結果をまとめると上記のように大きく三分類に別れるようです。この中で、一般的に禁止されているのが、@バイト型です。これは他の事業主に雇用されるため、様々な労働法的な観点からも管理が難しく、バイト先企業の職種によっては競業避止義務も問題も発生します。副業を禁止している企業の服務規程を見ても多くの場合がバイト型の禁止を想定しているようです。服務規程に「他社に雇用されることを禁止する」との規定がある場合が該当します。このバイト型の禁止は今の日本の労働習慣の中では仕方がないことも知れません。

これに対して、A事業型は、一部の企業で禁止されていますが、多くはありません。この副業は、言ってみれば個人事業主になるわけです。兼業農家を禁止するのが難しいのと同じで、個人事業主の禁止まで明文化されていない服務規程が多いと思います。また、この形態では、自己の能力を最大限発揮して収益を上げているものですから、後述する@財テク型とは比べ物にならないほど高い能力を保持している従業員であると言えます。例えば、中国語などの外大を卒業した方が、会社で中国語を必要とする職場に配属されることの方が稀だと思います。この為、個人で中国語の翻訳や通訳関連のビジネスを行う場合などです。もともと能力が高く頭の良い方ですから、あえて会社には言わず、順調にサイドビジネスをされている方も多数いらっしゃるようです。

最後にB財テク型ですが、これは、株の売買に代表されるような財テクが該当します。一部の従業員では年間数百万円の益をだしている方もいらっしゃいます。また、安く仕入れた物をWeb上のオークションサイトで販売する方もいらっしゃいます。一般的に、このような能力を自社で活かせることは少なく、そればかりか、レア商品を大量に買い占めて高値で転売する行為は、道徳的な面からも企業として好ましくないでしょう。また、この方たちの特徴として、自分の副業が生計を維持するメインと職業とはならないことを意識されているので、いくら儲かっても会社を辞めないことが多いようです。

ここまで見て思うのは、@バイト型は論外として、A事業型を行える従業員の能力は大変高いにも関わらず、服務規程で禁止されており、場合によっては懲戒対象になります。これに対して、B財テク型は特に有益な高いスキルを持っている訳でがありませんが服務規程上、自由にさせており、会社としては野放し状態とも言えます。ただ、財テク型を服務規程で禁止したり会社が取り締まったりするのは難しいのは事実です。しかし、事業型については、禁止したり取り締まったりするのではなく、逆に人材活用の観点から有効活用する道を探るのも企業にとって有益ではないかと考えております。

まとめ


 能力・スキル  財テク型 事業型  バイト型 
会社で生かせる専門能力の保有確率  低い  高い  低い 
 コミュニケーション能力 個人差あり  概ね高い  低い傾向あり 
素養、基礎学力 個人差あり  高い  低い傾向あり 
 自社への執着度 概ね高い  低い  高い 
 メンタルヘルス 普通  健康な方が多い  普通 


考察

一律に副業を禁止するのは、そろそろ時代の流れに合わなくなってきているのではないかと思っております。上記に記載しております通り、確かに従業員の副業は会社にとってリスク要因となります。しかし、全ての副業を就業規則で禁止しても、その効力は限定的です。ましてや副業を理由に解雇をするのは、競業避止義務に反するなど、一部の場合に限られるといえるでしょう。

バイト型を規制するのは良いとしても事業型の従業員の能力を有効活用できる職場、というものを真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。少し視点が違うかも知れませんが、東レやGoogleは労働時間の10%〜20%を従業員の自由研究で使用して良いという制度があるようです。ここ様に、従業員の自由さ、そして各自の能力を引出して、従業員の能力を120%発揮させる、それを企業の原動力にしていく、という考え方も重要だと思います。特に中小企業の事業主からすれば、従業員も人生の100%を自社の仕事にかけて欲しいと思うものです。ただ、事業主と従業員では立場が根本的に違いますから、各々の立場、考え方に立脚した上で、自社の為に全力を尽くす方法を探っていく必要があると思っております。


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参考資料

>>厚生労働省 第1回 柔軟な働き方に関する検討会

>>兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集(経済産業省)

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